私だったり、私じゃなかったり。

フィクションもノンフィクションも。

曾祖母のはなし

 

2歳8ヶ月の冬。

朝起きると曾祖母が亡くなっていた。

 

曾祖母は癌だった。

 

 

ちょうど冬休みでわたしの家族も

いとこの家族も曾祖母の家に

連日泊まっていた。

 

 

きっともう、曾祖母の命が長くないことを

知っていたから。

 

 

だけどわたしは、まだ2歳。

いろいろ知らなかった、分かっていなかった。

 

 

その頃、夜寝るときは日替わりで

誰かが曾祖母と同じ部屋で寝るようにしていた。

 

その日、わたしは母と母の姉と

曾祖母の部屋で眠りについた。

それなのに目が覚めたら別の部屋にいた。

 

そこに母がやってきて、

曾祖母が亡くなったことを教えてくれた。

 

そのときの気持ちは覚えていない。

それから家族がどんな様子だったとか、

どんな会話をしたのかも。

 

御葬式の日、

わたし達兄妹や従姉妹は一列に並び、

最年長の姉と最年長の従姉妹の2人が

曾祖母に向けて手紙を読んだ。

 

 

わたしはそのとき、

曾祖母が亡くなってから初めて涙を流した。

 

その涙は止まることなく、

小さい肩を震わせながら、

ただひたすらに泣いていた。

 

 

2歳のわたしでも、

もう大好きな曾祖母に会えないこと、

話せないこと、笑えないこと、

色んなことを理解できた。

 

 

わたしはよく曾祖母と2人で

バスに乗って買い物に出かけたり、

曾祖母の知り合いの家に遊びに行った。

 

曾祖母はわたしが曾祖母の家に行くたび

「よく来たね」と微笑んでくれた。

 

 

わたしは覚えていないけど、

曾祖母は亡くなる直前、

わたしの頬を触りながら

「ありがとう」と言って

眠りについたらしい。

 

 

 

 

あれからもう21年。

 

 

こんなわたしでも、

それなりに苦しいことや悲しいことがあって

涙が止まらない日々があった。

 

 

生きていることがとても辛くて、

もう立てないと思うことがあった。

 

 

そんな日々の中でわたしは

曾祖母に会いたいと思った。

もしかしたらどうしたらいいか

教えてくれるかもしれない、と思った。

 

 

だから逢いに行った。

教えてほしい、と願ったけど、

分かったことは、

どんな答えを出しても

味方でいてくれるということだった。

 

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だからわたしは今でもこうして

ここで生きていて、

笑って日々を過ごせている。

 

 

 

だけどもし、もう一度逢えたなら

「よく来たね」って笑ってほしい。